医はき師MBA てらぽん ちゃんぽん ブログ

医師はり師きゅう師経営学修士のてらぽんです。日々の気付きを記します。

書籍『リーダーの「任せ方」の順番』から派生した様々なこと

『リーダーの「任せ方」の順番』――任せる・育てる・医療安全を両立する実践ガイド

メタディスクリプション
K-HANDS-NEXTで取り扱った『リーダーの「任せ方」の順番』を、医師、看護師、薬剤師、リハビリ職、医療機関の管理職向けに解説する。まぁ生成AIに書いてもらって、備忘録的な記事です。EMPOWER、心理的安全性、Will-Can-Must、社会人基礎力、GROW、コルブの学習サイクルなどを、医療現場の具体例とともに整理する。
書籍情報は最後にあります。
書籍外のこともまとめたので、目次をみて気になるとことに飛んで下さい。


「後輩に任せたい。でも、自分でやったほうが早い」

「任せて失敗されるくらいなら、自分でやったほうが安全だ」

「指示を細かく出すと主体性が育たない。しかし、何も言わなければ丸投げになる」

医療現場で働いていると、このような葛藤に何度も出会う。

「成長のために、まずやらせてみよう」

この言葉だけでは済まされない場面がある。

一方で、失敗を恐れてリーダーがすべてを抱え込めば、後輩は経験を積めず、リーダーは疲弊し、組織はその人がいなければ動けなくなる。

では、任せることと医療安全を、どのように両立すればよいのだろうか。

そんなこんなの解決の一助になるようにメモを残す

この記事で分かること

  • リーダーが仕事を抱え込みすぎてはいけない理由

  • 「任せる」と「押し付ける」の違い

  • 医療現場での「任せてよい失敗」と「許容できない失敗」

  • Will-Can-Mustを使った任せる仕事の選び方

  • 社会人基礎力12項目の医療現場での具体例

  • EMPOWERメソッドを使った依頼の方法

  • 心理的安全性と医療安全を両立する方法

  • OJT、GROWモデル、コルブの学習サイクルの使い分け

  • ベテラン職員に任せるときのポイント

  • 明日から使える「任せ方チェックシート」


本書から得た最大の学び――任せるとは「仕事の移動」ではない

本書を読んで、最も大切だと感じたのは、次の点である。

任せるとは、上司の仕事を部下へ移すことではない。
相手が力を発揮し、成長し、主体的に動ける条件を設計することである。

仕事の移動だけを考えると、任せる行為は「業務の割り振り」になる。

しかし、人の成長まで考えると、任せる行為は「機会の設計」になる。

さらに医療現場では、患者安全まで考えなければならない。

したがって、医療における任せ方は、次の三つを同時に成立させる営みだと考えられる。

観点 問い
業務遂行 誰が、何を、いつまでに行うのか
人材育成 この経験によって、本人にどのような力がつくのか
医療安全 どこまで本人に任せ、どこから上司が関与するのか

この三つのうち、一つでも欠けると問題が生じる。

業務遂行だけを考えれば「押し付け」になりやすい。

人材育成だけを考えれば、患者を練習台にしかねない。

医療安全だけを考えて上司がすべてを行えば、後輩が育たず、持続可能性が失われる。

任せる力とは、この三つのバランスを取る力なのである。


上司の役割は「得手」と「主体性」を引き出すこと

本書では、上司の役割を大きく二つに整理している。

  1. 部下の得手を引き出す

  2. 部下の主体性を引き出す

これは、医療現場でもよく分かる。

例えば、診療経験では指導医が勝っていても、若手医師のほうが新しい診療支援AIや文献検索ツールに詳しいことがある。

看護管理者より、現場のスタッフのほうが夜勤帯の患者動線や、記録業務の無駄をよく知っているかもしれない。

ベテラン薬剤師より若手薬剤師のほうが、電子カルテから効率よく情報を抽出する方法を知っていることもある。

上司であることは、「あらゆる能力で部下より優れている」という意味ではない。

上司の役割は、すべての答えを持つことではなく、チームの中に散在している力を発見し、適切な場所で発揮してもらうことなのである。

「主体性がない人」と決めつけない

ある仕事に消極的だからといって、その人全体に主体性がないとは限らない。

例えば、症例検討会ではほとんど発言しない研修医が、患者説明用の資料作成では驚くほど力を発揮するかもしれない。

委員会活動には消極的な看護師が、新人指導では細やかな観察力と責任感を発揮することもある。

抽象化すると、主体性は固定された性格ではなく、次の条件によって変化する状態と考えたほうがよい。

  • 仕事に意味を感じられるか

  • 自分の得意分野を生かせるか

  • 適切な裁量が与えられているか

  • 失敗時に支援を受けられるか

  • 成長の見通しが持てるか

「この人には主体性がない」と評価する前に、「どの条件が欠けているのか」を考える必要がある。


プレイングマネジャーの個人業務は3割まで

本書では、リーダーの個人業務を全業務の3割程度にとどめることが推奨されている。

紹介されている調査では、個人業務を3割程度に抑えているマネジャーの組織はパフォーマンスが高く、5割を超えると組織成果が低下する傾向が示されたという。1日8時間勤務なら、個人業務はおおむね2~3時間が目安となる。

8時間勤務を分解すると

業務の種類 時間の目安 具体例
リーダー自身の個人業務 約2~2.5時間 自分の診療、文書作成、専門業務
メンバーとの対話・支援 約2時間 相談対応、進捗確認、フィードバック
チームの改善・未来づくり 約2時間 業務改善、教育、体制整備
調整・緊急対応 約1.5~2時間 会議、他部署との連携、突発対応

もちろん、医療現場では勤務時間をこのとおりに分割できない日もある。

救急搬送が続く日もあれば、欠勤者の代わりに自分が臨床業務を担わなければならない日もある。

重要なのは、毎日厳密に3割にすることではない。

慢性的にリーダーの個人業務が半分以上を占めていないかを点検することである。

1日8時間のうち、個人業務が3時間に達しているなら、すでに37.5%である。恒常化しているなら、黄色信号と考えたほうがよい。

忙しいリーダーは、相談の入口を閉じてしまう

リーダーが忙しそうにしていると、メンバーは次のように考える。

  • 「今、声をかけるのは申し訳ない」

  • 「これくらいは自分で処理しよう」

  • 「もう少し状況がはっきりしてから報告しよう」

  • 「悪い知らせを持っていくと機嫌を損ねそうだ」

その結果、相談や報告が遅れる。

医療では、相談の遅れが患者安全に直結することがある。

リーダーの余白は、単なる働きやすさではない。

チームの報告経路を開いておくための安全装置なのである。


※部下が「信頼されている」と感じるのは、仕事を任されたとき

上司は、部下を信頼しているつもりでも、その信頼が本人に伝わっているとは限らない。

「期待しているよ」

「いつも助かっている」

そう言われることも嬉しいが、信頼を最も具体的に感じやすいのは、重要な仕事を任されたときである。

本書でも、仕事を任される経験が、本人に「自分は信頼されている」という感覚を与えると説明されている。

ただし、何でも渡せば信頼になるわけではない。

同じ仕事でも、本人が「任せてもらった」と感じる場合と、「面倒な仕事を押し付けられた」と感じる場合がある。

その違いは、仕事の内容だけではなく、依頼の文脈にある。


「任せられて嬉しい」と「押し付けられた」の境界線

押し付けに聞こえる伝え方

「手が空いているなら、これをやっておいて」
「誰もやる人がいないからお願い」
「簡単だから、できるよね」
「とにかく金曜日までによろしく」

これらの伝え方では、上司側の都合しか伝わらない。

本人にとっては、なぜ自分なのか、この経験が何につながるのか、何を期待されているのかが分からない。

任せられたと感じやすい伝え方

「この退院支援カンファレンスの進行を、あなたに任せたいと思っています。最近、患者さんや多職種の話を整理する力が伸びているからです。今回の経験を通じて、チームの意見をまとめる力をさらに身につけられると思います。最初に進め方を一緒に確認し、終わった後に振り返りましょう」

本書は、なぜその人に任せるのか、その仕事がどのような成長につながるのかを具体的に伝えることが、「任されて嬉しい」という感覚につながると説明している

割り当てるのではなく、提案する

任せ方の基本形は、次のようになる。

「○○をあなたに任せたいと思っています。
あなたの△△という強みが生かせるからです。
この経験を通じて、□□の力を伸ばせると思います。
どう感じますか」

最後の「どう感じますか」が重要である。

本人の不安、現在の業務量、関心、必要な支援を聞くことで、一方的な命令が対話に変わる。

任せるとは、拒否を一切許さない形で仕事を渡すことではない。

組織上の必要性を伝えながら、本人が自分の課題として引き受けられる条件を一緒につくることである。


Will-Can-Mustで「誰に何を任せるか」を考える

任せる仕事を考える際に役立つのが、Will-Can-Mustの枠組みである。

要素 意味 医療現場での問い
Will 本人がやりたいこと、ありたい姿 「今後、どのような医療者になりたいですか」
Can 現在できること、強み、経験 「得意なこと、周囲から頼られることは何ですか」
Must 組織や役割から求められること 「チームとして、今どの役割が必要ですか」

理想的なのは、三つが重なる仕事である。

本人がやりたいこと(Will)
          ×
本人ができること(Can)
          ×
組織が必要とすること(Must)
          ↓
     任せる仕事の候補

例えば、患者教育に関心があり、説明が得意な看護師に、糖尿病患者向けの説明資料の改訂を任せる。

これはWill、Can、Mustが重なっている。

一方、組織が必要としているからという理由だけで、本人の関心や能力を無視して業務を渡すと、「やらされ仕事」になりやすい。

Willを明確に語れる人は、案外少ない

「将来、何をしたいですか」

そう尋ねても、すぐに答えられる人ばかりではない。

特に、日々の業務で精いっぱいの人や、まだ十分な経験を積んでいない人にとって、明確なWillを語ることは難しい。

その場合、壮大な将来像を求めなくてよい。

次のような質問から始めると、Willの種が見つかりやすい。

  • 最近、やっていて面白かった仕事は何か

  • もう少し上手になりたいことは何か

  • 周囲から感謝された仕事は何か

  • 苦にならずに続けられることは何か

  • 半年後、今より少しできるようになっていたいことは何か

  • 「この人のようになりたい」と思う医療者はいるか

Willは、上司が聞き出す「正解」ではない。

対話を重ねながら、本人と一緒に言語化していく仮説である。


「教えれば育つ」は幻想――教えて、課題を残す

「教えれば育つ、は思い込み」という問題提起がある。

知識を伝えるだけで、人が自動的に成長するわけではない。

医学書を読んだだけでは診療ができないように、リーダーシップの説明を聞いただけでも人を動かせるようにはならない。

成長には、少なくとも次の要素が必要である。

知識を得る
  ↓
実際にやってみる
  ↓
うまくいかなかった部分に気づく
  ↓
原因を考える
  ↓
次の方法を試す

したがって、育成に必要なのは「教え切ること」ではない。

最低限必要なことを教えたうえで、本人が考えなければ解けない課題を残すことである。

医療現場の例

後輩に患者説明を任せるとき、説明内容を一字一句指定してしまえば、その場はうまくいくかもしれない。

しかし、本人は「上司の台本を再生した」だけで終わる。

一方、次のように任せると学習課題が残る。

「患者さんが治療の目的、主な選択肢、注意点を理解し、自分の希望を話せる状態をゴールにしましょう。説明の順番と言葉の選び方は任せます。説明前に、どのように進める予定か一度教えてください」

ゴールと安全条件は示す。

しかし、具体的な説明方法には本人が考える余地を残す。

この余白が、成長を生む。


最初に「失敗の定義」を決めておく

リーダーが任せきれない最大の理由の一つは、失敗への恐れである。

本書では、失敗を大きく次の二つに分けて考える。

  • 成長への投資になる失敗

  • 取り返しのつかない失敗

そして、取り返しのつかない失敗でなければ、学びのための投資として扱うという考え方が示されている。

ただし、この考え方を医療現場に持ち込むときは、慎重な翻訳が必要である。

患者の生命、重大な後遺症、個人情報、法令、倫理に関わる失敗を、安易に「成長への投資」と呼んではならない。

医療現場における失敗の三分類

区分 意味 リーダーの関与
赤:回避すべき失敗 患者への重大な危害、法令・倫理違反につながる 致死的な薬剤投与、重大所見の見逃し、個人情報漏えい 事前確認、直接監督、即時報告
黄:管理された挑戦 失敗時の影響はあるが、早期発見・修正が可能 初めての退院調整、患者説明、会議進行 中間確認、相談基準、バックアップ
緑:学習への投資 修正可能で、患者への重大な影響が少ない 資料作成、勉強会運営、業務改善案の作成 原則として本人に任せ、後で振り返る

任せる前に、少なくとも次の四点を決めておく。

  1. 絶対に避ける事態は何か

  2. どの時点で相談するか

  3. 上司が事前に確認する部分はどこか

  4. 問題が起きたとき、誰がどのように支援するか

「失敗しても大丈夫」と曖昧に伝えるのではない。

何が大丈夫で、何は大丈夫ではないのかを言語化する。

それが、安心して任せるための条件となる。


成功体験と失敗体験をどう考えるか

成功体験は、次の成功可能性を高める。

一方、本書では、ロケット打ち上げ産業の組織学習を分析したMadsenとDesaiの研究を紹介し、失敗経験の学習効果が成功経験より大きかったと説明している。本書の紹介記事では、分析係数の比較から「約4倍」と表現されている。

ただし、この「4倍」という数字には注意が必要である。

これは、世界のロケット打ち上げ組織を対象とした特定の研究モデルに基づく比較であり、あらゆる職場、あらゆる課題、ましてや医療事故にそのまま適用できる普遍的な倍率ではない。

大切なのは数字そのものではなく、次の構造である。

成功
→ 現在の方法が有効だと確認できる
→ 方法が洗練される

失敗
→ 現在の方法では足りないと気づく
→ 原因を探す
→ 新しい情報や方法を探索する
→ 認識や行動が更新される

失敗が自動的に学びになるわけではない。

失敗を隠したり、個人を責めたり、原因を曖昧にしたりすれば、同じ失敗が繰り返される。

失敗が学びになるためには、次の条件が必要である。

  • 重大な危害を避ける仕組みがある

  • 事実を率直に報告できる

  • 振り返る時間がある

  • 原因を個人の性格だけに帰属させない

  • 次に変える行動を決める

  • 再挑戦する機会がある

つまり、失敗からの学習効果を生むのは、失敗そのものではなく、失敗後の探索と振り返りなのである。


社会人基礎力を「任せる仕事の設計図」にする

経済産業省は、社会人基礎力を「職場や地域社会で多様な人々と仕事をしていくために必要な基礎的な力」とし、三つの能力と12の能力要素に整理している。(経済産業省)

社会人基礎力は、部下を評価するためだけの一覧表ではない。

「この仕事を任せることで、どの力を伸ばすのか」を考えるための地図として使える。

社会人基礎力12項目と医療現場の具体例

三つの力 能力要素 抽象的な意味 医療現場での具体例
前に踏み出す力 主体性 自ら取り組む 病棟の転倒事例を見て、自分から改善案を作る
前に踏み出す力 働きかけ力 周囲を巻き込む 医師、看護師、薬剤師に声をかけ、服薬支援の方法を検討する
前に踏み出す力 実行力 目標に向けて行動する 決めた患者教育プログラムを試行し、期限までに評価する
考え抜く力 課題発見力 現状と理想の差を捉える 退院延期の原因が説明不足ではなく、家族調整の遅れだと見抜く
考え抜く力 計画力 手順や優先順位を組み立てる カンファレンスまでに必要な情報と担当者を整理する
考え抜く力 創造力 新しい方法や価値を生む 紙の説明資料を動画とQRコードに置き換える
チームで働く力 発信力 分かりやすく伝える 患者の変化を結論、根拠、提案の順で報告する
チームで働く力 傾聴力 相手の意見を丁寧に聴く 患者本人、家族、多職種の異なる希望を整理する
チームで働く力 柔軟性 意見や状況の違いに対応する 自分の案に固執せず、患者の価値観に合わせて計画を修正する
チームで働く力 状況把握力 自分と周囲の関係を見る チームが多忙な時間帯を避けて相談や依頼を行う
チームで働く力 規律性 約束やルールを守る 報告期限、個人情報保護、感染対策の手順を守る
チームで働く力 ストレスコントロール力 ストレスに対処する 緊張する場面でも抱え込まず、早めに支援を求める

社会人基礎力を使った任せ方

例えば、「多職種カンファレンスの進行」を任せる場合、伸ばしたい力を次のように明確にできる。

  • 発信力

  • 傾聴力

  • 状況把握力

  • 働きかけ力

  • 計画力

依頼するときに、すべてを伝える必要はない。

「今回は、異なる意見を整理して、参加者が次の行動を決められる進行力を伸ばす機会にしてほしい」

このように一つか二つに絞ると、本人も何を意識すべきか分かりやすい。


職務拡大と職務充実――仕事の量ではなく、成長の質を見る

任せる仕事を考えるときには、二つの視点が役立つ。

職務拡大:Job Enlargement

職務拡大とは、同程度の責任や難易度の業務を横方向に広げることである。

例えば、病棟看護師が担当する係を一つ増やす、医師が追加の委員会に参加する、といった形である。

職務充実:Job Enrichment

職務充実とは、判断、計画、裁量、責任、振り返りなどを含め、仕事を縦方向に深くすることである。一般に、職務拡大が仕事の幅を広げるのに対し、職務充実は自律性や責任を高める方向の職務設計と整理される。(JSTOR)

観点 職務拡大 職務充実
方向 横に広げる 縦に深める
主な変化 業務の種類・量が増える 裁量、判断、責任が増える
委員会をもう一つ担当する 委員会の課題設定から改善評価まで任せる
注意点 単なる負担増になりやすい 支援なしでは過重責任になりやすい

悪い任せ方は、職務拡大だけを行う。

「あなたは仕事ができるから、これも、あれもお願い」

これでは、優秀な人ほど疲弊する。

良い任せ方は、職務充実を意識する。

「これまで資料作成を担当してくれましたが、今回は課題設定と進行方法も含めて任せたいと思います。最終決定の前に一度相談してください」

任せるとは、仕事を増やすことではない。

本人が考え、決め、成果を実感できる範囲を広げることである。


部下が忙しいなら、先にECRSで仕事を減らす

「任せたいが、部下も忙しい」

この悩みに対して、「何とか時間をつくって」と言うだけでは解決しない。

新しい仕事を任せる前に、現在の業務を減らす必要がある。

そこで役立つのがECRSの法則である。

E:Eliminate なくせないか
C:Combine まとめられないか
R:Rearrange 順番や担当を変えられないか
S:Simplify 簡単にできないか

一般に、この順番で検討すると改善効果が高いとされる。(アドフ)

ECRS 問い 医療現場の例
Eliminate そもそも、やめられないか 誰も活用していない集計表を廃止する
Combine 一つにまとめられないか 二つの委員会で重複する報告を統合する
Rearrange 順番、時間、担当を変えられないか 毎日行っていた確認を、条件に応じた実施へ変更する
Simplify より簡単にできないか 自由記載をテンプレートやチェック欄に変える

ECRSで最も重要なのはE

業務改善というと、すぐにテンプレートやデジタル化を考えがちである。

しかし、不要な仕事を効率化しても、「不要な仕事を速く行う」だけである。

最初に問うべきなのは、

「この仕事は本当に必要か」

である。

新しい仕事を任せるときは、「これを追加する代わりに、何を減らすか」もセットで考えたい。


任せ方の基本方針――EMPOWERメソッド

本書では、主体性を高める任せ方を、EMPOWERという七つの原則に整理している。(明日香出版社)

文字 原則 意味 医療現場での実践
E Exposure 必要な情報を開示する 背景、経緯、患者・組織への影響を共有する
M Mission 目的と成果を明確にする 「資料を作る」ではなく「患者が選択肢を理解できる状態を作る」
P Psychological Safety 心理的安全性を確保する 早めの相談や悪い報告を歓迎すると伝える
O Ownership 自己決定感を持たせる 方法や進め方を本人に考えてもらう
W Wrap-up 振り返りを予約する 開始時点で中間確認日と終了後の面談日を決める
E Essence 仕事の意味を伝える その仕事が患者やチームにどう役立つかを説明する
R Range 裁量の範囲を明確にする 自分で決めてよいこと、相談すること、上司が決めることを分ける

EMPOWERを使った依頼例

「退院患者さん向けの服薬説明資料の改訂をお願いしたいです。
現在、説明内容が担当者によって異なり、患者さんが退院後に混乱することがあります【Exposure】。
今回のゴールは、患者さんが自宅での服薬方法と、困ったときの連絡先を理解できる資料を作ることです【Mission】。
最初から完璧でなくて構いません。不明点や難しい点は、早めに相談してください【Psychological Safety】。
構成や表現方法は、あなたが最も伝わりやすいと思う形を提案してください【Ownership】。
来週水曜日に草案を確認し、運用開始後2週間で振り返りましょう【Wrap-up】。
この資料は、患者さんの服薬間違いを防ぎ、安心して自宅療養を続けるためのものです【Essence】。
内容とデザインは提案して構いませんが、薬剤名と注意事項は薬剤部の確認を受けてください【Range】」

これだけ伝えれば、仕事の輪郭がかなり明確になる。

任せる際に説明が長すぎる必要はないが、少なくとも次の三つは欠かせない。

  • 何のために行うのか

  • どこまで任せるのか

  • 困ったとき、いつ相談するのか


心理的安全性は「何を言っても許されること」ではない

心理的安全性は、医療現場において特に重要な概念である。

Amy Edmondsonは、心理的安全性を、意見、質問、懸念、失敗などを表明しても、罰や屈辱を受けないとメンバーが信じられる状態として論じている。

ただし、それは緊張感のない仲良し集団や、「何をしても責任を問われない環境」を意味しない。明確な目標や説明責任と、率直に発言できる環境は両立する。(ハーバードビジネススクールライブラリー)

医療における心理的安全性

例えば、看護師が医師の薬剤指示に疑問を感じたとする。

心理的安全性が高いチームでは、

「この投与量でよいか、もう一度確認してもよろしいでしょうか」

と言える。

心理的安全性が低いチームでは、

「間違っていたら恥ずかしい」
「怒られるかもしれない」
「立場の低い自分が言うべきではない」

と考え、発言を控える。

実際、Edmondsonの研究では、薬剤量に疑問を感じた看護師が医師へ確認する場面や、手術室で職種を超えて懸念を表明することが、心理的安全性の例として論じられている。(Harvard Business School)

心理的安全性は、優しい職場をつくるためだけの概念ではない。

異常や違和感を、患者に危害が及ぶ前に言葉にするための医療安全基盤である。


心理的安全性がないと「やったふり」が始まる

本書では、心理的安全性のない環境で強いプレッシャーを受けると、人は本音や失敗を隠し、「やったふり」をするようになると警鐘を鳴らしている。

さらに、それがエスカレートすると、帳尻合わせ、改ざん、虚偽などの不正につながり得ると指摘する。(ZUU online)

医療現場で考えると、次のような状態である。

  • 実施していない確認を「実施済み」と記録する

  • 患者への説明が不十分なのに「説明済み」とする

  • 遅延や未完了を隠すため、記録上の時刻を調整する

  • インシデントを報告せず、なかったことにする

  • 理解できていないのに「分かりました」と答える

不正を行った本人の責任は、当然なくならない。

しかし、同様の行動が繰り返されるなら、個人の倫理観だけでなく、組織が「正直な報告より、問題がないように見せること」を評価していないかを検討する必要がある。


心理的安全性をつくる三つの心得

1.言い訳を直ちに否定せず、学びに戻す

ミスの報告を受けたとき、相手が事情を説明すると、

「言い訳をするな」

と言いたくなることがある。

しかし、説明の中には、再発防止に必要な情報が含まれているかもしれない。

  • 指示が曖昧だった

  • 複数業務が重なっていた

  • 相談相手が不在だった

  • 手順書と実際の運用が異なっていた

  • 必要な情報へアクセスできなかった

まずは一定時間、遮らずに話を聴く。

その後で、

「では、次に同じ状況になったとき、何を変えればよいでしょうか」

と学びへ戻す。

言い訳を聞くことは、責任を免除することではない。

背景を理解し、変えられる条件を探すための作業である。

2.上司が弱みや不完全さを見せる

上司が常に正解を知っているように振る舞うと、部下は自分の不確実さを表明しにくくなる。

一方、上司が次のように言えると、相談の入口が開く。

「私も見落とすことがあります。違和感があれば必ず言ってください」
「この分野は、あなたのほうが詳しいと思います」
「私の考えにも抜けがあるかもしれません。別の見方があれば教えてください」

Edmondsonの研究でも、リーダーが自分の誤り得ることを認め、メンバーへ発言を求める姿勢が、心理的安全性をつくる行動として示されている。(Harvard Business School)

弱みを見せるとは、判断を放棄することではない。

自分の認知には限界があると認め、チームの情報を活用することである。

3.多様性を「我慢する」のではなく、意思決定に生かす

多様性を尊重するとは、異なる意見を表面的に歓迎するだけではない。

  • 経験年数の短い人の意見

  • 非常勤職員の意見

  • 他職種の意見

  • 少数派の意見

  • 患者や家族の意見

  • 自分にとって耳の痛い意見

これらを、意思決定に必要な情報として扱うことである。

リーダー自身と似た意見ばかりが集まるチームは、意思決定が速い。

しかし、盲点にも気づきにくい。

多様性は、会議を少し難しくするかもしれないが、判断を強くする。


相手の経験に応じて、任せ方を変える

任せ方には、常に一つの正解があるわけではない。

未経験者に何も説明せず任せれば、丸投げになる。

一方、十分な経験を持つ人に細かな手順まで指示すれば、マイクロマネジメントになる。

本書では、相手の状況に合わせて、OJT型、ティーチング型、コーチング型、委任型などを使い分ける考え方が紹介されている。(明日香出版社)

相手の状態 適した関わり 上司の役割
未経験 OJT型 見本を示し、安全に練習させる
経験が浅い ティーチング型 仕事の全体像、手順、判断基準を教える
一定の経験がある コーチング型 質問によって考えを引き出す
十分な経験がある 委任型 成果と境界だけ示し、方法は任せる

任せ方の失敗は、能力の高低だけでなく、任せ方と本人の状態の不一致によって起こる。


未経験者にはShow-Tell-Do-Check

初めての業務を教えるときには、次の四段階が分かりやすい。

Show:上司がやって見せる
  ↓
Tell:ポイントや理由を言葉で説明する
  ↓
Do:本人にやってもらう
  ↓
Check:実施後に確認し、フィードバックする

例:初めて電話で他院へ患者紹介を行う研修医

Show

指導医が実際の連絡を行い、どのような順番で話すかを見せる。

Tell

次のポイントを説明する。

  • 最初に自分と所属を名乗る

  • 相談目的を一文で伝える

  • 緊急度を明確にする

  • 相手が判断するために必要な情報へ絞る

  • 最後に合意事項を復唱する

Do

次の症例では、研修医に実際の電話を行ってもらう。

Check

終了後に、うまくできたことと改善点を振り返る。

「最初に相談目的を伝えたので、相手が状況を理解しやすかったですね。一方、バイタルサインが後半になったので、次はもう少し早い段階で伝えてみましょう」

Showだけでは見よう見まねになる。

Tellだけでは頭の中の理解で終わる。

Doだけでは無謀な実践になる。

Checkがなければ経験が学びに変わらない。

四段階を一つのセットとして考えることが重要である。


以下の部分に差し替えてください。表記は、一般的な英語に合わせて Resource(資源) としています。

本人に考えてもらうGROWモデル

一定の経験を持つ部下に対して、上司がすぐに答えを示してしまうと、本人が状況を整理し、自分で解決策を考える機会を奪ってしまう。

そのような場面で役立つのが、GROWモデルである。

GROWモデルは、質問を通じて本人の思考を整理し、目標から具体的な行動へつなげるコーチングの枠組みである。

一般的には、次の四つの段階で構成される。

G:Goal――目標
R:Reality/Resource――現状と活用できる資源
O:Options――選択肢
W:Will/Way Forward――意思と次の行動

ここで重要なのは、RをReality(現状)だけで終わらせないことである。

問題に直面している本人は、できていないことや足りないものに意識が向きやすい。しかし、実際には、すでにできていること、協力を求められる人、利用できる制度、過去の成功経験など、解決に活用できるさまざまな**Resource(資源)**を持っている。

現状の問題を確認するだけでなく、使える資源にも目を向けることで、本人は「できない理由」を並べる状態から、「今あるものを使って、何ができるか」を考える状態へ移りやすくなる。

GROWモデルの全体像

段階 意味 確認する内容 質問例
G:Goal 目標 目指す状態、得たい成果 「最終的に、どのような状態を目指しますか」
R:Reality 現状 現在起きていること、障壁、事実 「今、何が起きていますか」「どこで止まっていますか」
R:Resource 資源 強み、経験、協力者、情報、時間、制度 「すでに使えるものは何ですか」「誰に協力を求められますか」
O:Options 選択肢 考えられる方法、代替案 「どのような方法が考えられますか」「ほかにはありますか」
W:Will/Way Forward 意思・次の行動 実行すること、期限、報告方法 「まず何をしますか」「いつまでに行いますか」

医療現場での具体例

後輩から、次のような相談を受けたとする。

「患者さんの退院支援が進みません。どうしたらよいでしょうか」

上司がすぐに、

「家族に電話して、ケアマネジャーにも連絡してください」

と指示すれば、その場の仕事は進むかもしれない。

しかし、それを繰り返していると、後輩は困るたびに上司から答えをもらうようになり、自分で状況を整理して解決策を考える力が育ちにくい。

そこで、GROWモデルに沿って質問してみる。

G:Goal――何を目指すのか

「今回、患者さんにとって、どのような退院の形を目指していますか」

まず、目標を明確にする。

単に「早く退院させる」ことが目標ではない。

患者本人と家族が退院後の生活を具体的にイメージでき、必要な医療・介護サービスが整い、安全に療養を継続できることが目標かもしれない。

目標が曖昧なままでは、何を優先して動けばよいかも決められない。

R:Reality――現在、何が起きているのか

「現在、どこまで調整できていますか」
「具体的に、何が退院の障壁になっていますか」
「患者さん本人と家族は、どのように考えていますか」

ここでは、推測や評価ではなく、できるだけ事実を整理する。

例えば、本人は自宅退院を希望しているが、家族は介護負担を心配している。訪問看護は調整できているが、夜間の支援体制が決まっていない。このように整理すると、「退院支援が進まない」という漠然とした問題が、具体的な課題へ変わる。

R:Resource――何を活用できるのか

「すでに調整できていることは何ですか」
「これまでに似た事例へ対応した経験はありますか」
「院内外で、誰に相談できそうですか」
「活用できる制度やサービスはありますか」
「患者さんや家族が持っている強みは何でしょうか」

医療現場におけるResourceには、さまざまなものが含まれる。

資源の種類 医療現場での具体例
本人の能力・経験 過去の退院支援経験、説明力、調整力
チーム内の人的資源 医師、看護師、医療ソーシャルワーカー、薬剤師、リハビリ職
地域の人的資源 ケアマネジャー、訪問看護師、かかりつけ医、地域包括支援センター
制度・サービス 介護保険、訪問診療、ショートステイ、福祉用具
情報 過去の記録、地域資源一覧、院内マニュアル
患者・家族の力 本人の意欲、家族の協力、近隣住民との関係
時間・機会 次回カンファレンス、退院前訪問、試験外泊

課題だけを見ていると、「足りないもの」ばかりが目につく。

Resourceを確認すると、「すでに持っているものを、どのように組み合わせるか」という発想が生まれる。

O:Options――どのような選択肢があるのか

「考えられる方法を、まず三つ挙げるとしたら何がありますか」
「ほかには、どのような方法がありますか」
「制約がなければ、どのような方法を試したいですか」
「それぞれの方法には、どのような利点とリスクがありますか」

この段階では、最初から一つの正解に絞らない。

例えば、次のような選択肢が考えられる。

  1. 家族を交えた多職種カンファレンスを行う

  2. 退院前訪問を行い、自宅環境を確認する

  3. 訪問看護や定期巡回サービスを導入する

  4. 試験外泊を行い、家族の不安を具体化する

  5. 一時的にショートステイを利用し、段階的な在宅移行を目指す

複数の選択肢を並べることで、「家族を説得するしかない」といった思考の狭まりを防ぐことができる。

W:Will/Way Forward――何を、いつ行うのか

「では、最初に何をしますか」
「いつまでに行いますか」
「誰に協力を依頼しますか」
「どの時点で、私に経過を共有しますか」
「実行する自信は、10点満点で何点ですか」

最後に、考えた選択肢を具体的な行動へ変える。

例えば、次のように決める。

「今日中に医療ソーシャルワーカーへ相談し、明日の午前中に家族へ連絡します。3日後までに多職種カンファレンスを設定し、その結果を上司へ報告します」

「家族に連絡する」だけでは、行動としてはまだ曖昧である。

誰が、何を、いつまでに行い、どの時点で共有するのかまで決めることで、実行可能性が高まる。

GROWモデルの流れ

G:Goal
どのような状態を目指すのか
        ↓
R:Reality
今、何が起きているのか
        ↓
R:Resource
すでに持っている力や使える資源は何か
        ↓
O:Options
どのような方法が考えられるか
        ↓
W:Will/Way Forward
何を、いつまでに実行するのか

「Reality」だけでは、問題探しで終わることがある

Realityを詳しく確認することは重要である。

しかし、現状や問題点ばかりを尋ね続けると、対話が次のようになりかねない。

「何ができていないのですか」
「なぜ進んでいないのですか」
「ほかにも問題はありますか」

これでは、本人は自分の不足を追及されているように感じることがある。

そこで、Realityを確認した後に、Resourceへ質問を移す。

「それでも、ここまで進められた理由は何でしょうか」
「すでにできていることは何ですか」
「誰の力を借りられそうですか」
「以前うまくいったときには、何をしていましたか」

Realityが「現在地を知る問い」だとすれば、Resourceは「現在地から動き出すために、すでに持っているものを見つける問い」である。

両方を確認することで、問題分析だけではなく、解決へ向かう対話になる。

GROWモデルで上司が注意したいこと

GROWモデルは、質問の形式を順番どおり使えばよいというものではない。

上司が自分の望む答えへ誘導するために質問を使えば、それはコーチングではなく、質問形式の指示になる。

例えば、

「まず家族に電話したほうがよいと思いませんか」

という問いは、実質的には指示である。

本人に考えてもらうためには、上司が答えを急がず、沈黙を待ち、本人の言葉を聴く必要がある。

一方で、医療安全上、緊急性が高い場面までGROWモデルだけで対応してはいけない。

患者の状態が悪化している、重大なリスクが迫っている、法令や倫理上の問題があるといった場合には、上司が明確に指示し、迅速に介入する必要がある。

状況 適した関わり
緊急性・危険性が高い 上司が明確に指示する
未経験で基礎知識が不足している ティーチングやOJTを行う
一定の経験があり、自分で考えられる GROWモデルで思考を支援する
十分な経験と能力がある 成果と境界を示し、委任する

GROWモデルの目的は、すべてを本人だけで解決させることではない。

本人が目標と現状を整理し、自分や周囲の資源に気づき、複数の選択肢から次の行動を選べるように支援することである。

上司が答えを与えるのではなく、本人の中と周囲にすでに存在している答えの材料を、一緒に見つける。

それが、GROWモデルを使った任せ方の本質である。


ベテランに任せる委任型の三つのステップ

自分より経験や実力のあるベテランに任せる場合、上司が方法まで細かく指定する必要はない。

基本は次の三段階である。

1.期待する成果を明確に伝える

「新しい入院時オリエンテーションを作ってください」

ではなく、

「入院当日に、患者さんと家族が今後の流れと相談先を理解できる状態をつくってください」

と、成果で伝える。

2.やり方は本人に任せる

ベテランは、自分なりの経験、関係性、判断基準を持っている。

上司が方法を細かく指定すると、その強みを生かせない。

3.実行前に方針の報告を受ける

やり方は任せるが、実施後に初めて内容を知るのでは遅い場合がある。

「進め方は任せます。開始前に、全体方針と想定リスクだけ共有してください」

と伝える。

これはマイクロマネジメントではない。

患者安全や組織的整合性を保ちながら、本人の裁量を最大限にするための確認である。


管理職を目指す一つの試金石

管理職を目指すかどうかを考えるとき、

「自分は人より仕事ができるか」

だけを基準にしてはいけない。

管理職に求められるのは、自分が成果を出す力だけではない。

人が動ける条件をつくることに、自信と関心を持てるか

という問いが重要になる。

ここでいう「人を動かす」とは、命令によって従わせることではない。

  • 目的を共有する

  • 相手の得意を見つける

  • 適切な仕事を提案する

  • 必要な情報と裁量を渡す

  • 不安や障壁を取り除く

  • 挑戦を支援する

  • 経験を学びへ変える

こうした働きかけによって、本人が自ら動けるようにすることである。

自分が100の仕事を行うことと、10人がそれぞれ20の力を出せる環境をつくることは、求められる能力が異なる。

管理職になるとは、「最も優秀なプレイヤーになること」から、「チームの力が最大になる条件をつくること」へ、仕事の重心を移すことである。


任せた後は、コルブの学習サイクルで振り返る

任せただけでは、人は必ずしも成長しない。

経験を学習へ変えるためには、振り返りが必要である。

コルブの経験学習モデルでは、学習を次の四段階の循環として捉える。(CITT)

①具体的経験
実際にやってみる
      ↓
②内省的観察
何が起きたかを振り返る
      ↓
③抽象的概念化
経験から原則や仮説を導く
      ↓
④能動的実験
次の場面で新しい方法を試す
      ↓
再び具体的経験へ

症例検討会の進行を任せた場合

具体的経験

本人が実際に症例検討会を進行する。

内省的観察

「どの場面がうまくいきましたか」
「どの場面で議論が止まりましたか」

抽象的概念化

「意見が出ないときは、全体へ漠然と質問するより、論点を限定したほうが発言しやすいのかもしれません」

能動的実験

「次回は、最初に『診断』『治療』『生活背景』の三つに論点を分けてみます」

経験を重ねるだけでは、「慣れ」は生まれても、「学び」が生まれるとは限らない。

振り返りによって具体的な経験を抽象化し、次の行動に戻すことで、経験が再利用可能な知恵になる。


事実確認とフィードバックにはSBIを使う

部下の行動について話すとき、

「最近、態度がよくない」
「主体性がない」
「報告が雑だ」

といった評価語だけを使うと、話し合いが感情的になりやすい。

そこで役立つのがSBIである。

  • Situation:どのような状況で

  • Behavior:どのような行動があり

  • Impact:どのような影響が生じたか

SBIは、具体的な状況、観察可能な行動、その影響を分けて伝えるフィードバック方法である。

悪い伝え方

「あなたは、いつも報告が遅い」

「いつも」という言葉は、反論を招きやすい。

SBIを使った伝え方

Situation:昨日の夕方、患者さんの血圧が低下した場面で
Behavior:再測定後も収縮期血圧が80mmHg台でしたが、医師への報告が約30分後になりました
Impact:対応開始が遅れる可能性があり、患者安全上の懸念を感じました

この後、

「そのとき、どのような判断をしていましたか」

と意図や背景を尋ねる。

事実だけを示して終わるのではなく、本人の認識を確認することで、フィードバックが対話になる。

「SBIを3セット」集める

一つの出来事だけで人物全体を評価すると、偶発的な事情を性格の問題と誤認することがある。

そこで、重要な評価や配置判断を行う前には、可能であればSBIを三つ程度集めてみる。

セット Situation Behavior Impact
1 朝の申し送り 重要な検査結果の共有がなかった 日勤者が後から確認する必要が生じた
2 退院前カンファレンス 家族の希望を確認せず結論を急いだ 退院計画を再調整することになった
3 夜間の状態変化 基準を超えても報告を保留した 対応開始が遅れる可能性が生じた

三つを並べることで、

  • 同じ傾向が繰り返されているのか

  • 特定の状況だけで起きているのか

  • 知識不足なのか

  • 判断基準が曖昧なのか

  • 忙しさや環境に原因があるのか

を検討しやすくなる。

なお、SBIモデル自体の基本単位はSituation、Behavior、Impactの一組である。「三セット集める」は、単発事例による決めつけを避けるための、本記事における実務上の運用提案である。


本書の内容を医療現場向けに一枚でまとめる

【任せる前】
組織の目的を確認する
        ↓
任せる仕事を選ぶ
        ↓
Will・Can・Mustを確認する
        ↓
ECRSで本人の余白をつくる
        ↓
失敗の定義と安全境界を決める

【任せるとき】
なぜ本人に任せるのかを伝える
        ↓
EMPOWERで目的・裁量・相談基準を共有する
        ↓
本人の理解と不安を確認する

【実行中】
経験に応じて関与を変える
未経験:Show-Tell-Do-Check
中堅:GROWで考えてもらう
ベテラン:成果を示し、方法は委任する
        ↓
決めた時点で中間確認する

【任せた後】
SBIで事実を確認する
        ↓
コルブの学習サイクルで振り返る
        ↓
次の課題と裁量を決める

明日から使える「任せ方チェックシート」

任せる前

  • この仕事の目的を一文で説明できる

  • 完成物ではなく、期待する成果を説明できる

  • なぜこの人に任せるのかを説明できる

  • 本人のWill、Can、Mustを考えた

  • 本人の現在の業務量を確認した

  • ECRSで減らせる仕事を検討した

  • 取り返しのつかない失敗を定義した

  • 途中で相談すべき条件を決めた

  • 上司が確認する部分を決めた

  • 失敗時のバックアップ方法を用意した

任せるとき

  • 「やっておいて」ではなく、任せたい理由を伝えた

  • この経験が本人の成長にどうつながるかを伝えた

  • 必要な情報を開示した

  • 本人が決めてよい範囲を明確にした

  • 上司が決める範囲を明確にした

  • 相談や悪い報告を歓迎すると伝えた

  • 本人の理解、不安、異論を確認した

  • 中間確認日を決めた

  • 終了後の振り返り日を決めた

任せた後

  • すぐに自分のやり方へ修正しなかった

  • 結果だけでなく、考えた過程を聞いた

  • できなかったことだけでなく、できたことも確認した

  • SBIで具体的な事実を伝えた

  • 本人の意図や背景を尋ねた

  • 失敗を責めるだけで終わらせなかった

  • 経験から得た学びを言語化した

  • 次回に変える行動を一つ決めた

  • 次に任せる仕事や裁量を検討した


まとめ――任せることは、リーダーが楽をする技術ではない

任せるというと、リーダーの仕事を減らす手段だと思われることがある。

確かに、適切に任せられるようになれば、リーダーが一人ですべてを抱え込む必要はなくなる。

しかし、任せることの本質は、単なる負担軽減ではない。

任せるとは、

  • 相手の得手を見つけること

  • 本人が意味を感じられる仕事を提案すること

  • 必要な情報と裁量を渡すこと

  • 患者安全を守る境界を決めること

  • 相談しやすい環境をつくること

  • 失敗を隠さず、学びに変えること

  • 経験を次の挑戦へつなげること

である。

リーダーが仕事を手放すだけなら、丸投げになる。

リーダーが方法をすべて指定すれば、作業代行になる。

何も失敗させまいと先回りし続ければ、主体性は育たない。

反対に、安全境界を設けずに挑戦させれば、無責任になる。

良い任せ方とは、放任と過干渉の中間ではない。

目的と安全の境界は明確にし、その内側では本人に考え、決め、試してもらうこと。

これが、任せることと育てること、そして医療安全を両立するための基本なのだと思う。

明日、すべてを変える必要はない。

まずは一つだけ、

「自分が抱えているこの仕事は、本当に自分にしかできないのか」

と問い直してみる。

そして任せられそうな仕事が見つかったら、

「これをあなたに任せたい。あなたのこの強みが生かせるし、このような成長につながると思う」

と、提案してみる。

その一言は、リーダーの負担を減らすだけでなく、誰かにとって「自分は信頼されている」と感じる瞬間になるかもしれない。

任せることは、仕事を手放すことではない。

人の可能性に、仕事という形で機会を手渡すことなのである。


書籍情報・参考資料

 

  • 伊庭正康『リーダーの「任せ方」の順番――部下を持ったら知りたい3つのセオリー』明日香出版社、2025年。(明日香出版社)

  • 経済産業省「社会人基礎力」。(経済産業省)

  • Amy C. Edmondson, “Managing the Risk of Learning: Psychological Safety in Work Teams.” (Harvard Business School)

  • Peter M. Madsen and Vinit Desai, “Failing to Learn? The Effects of Failure and Success on Organizational Learning in the Global Orbital Launch Vehicle Industry.” (Academy of Management Journals)

  • Center for Creative Leadership, Situation-Behavior-Impact Model. (CCL)

  • Performance Consultants, GROW Model. (Performance Consultants)

  • University of Florida, Kolb’s Four Stages of Learning. (CITT)

 

おまけ

わたくし、日常診療のかたわら、『医はき師 てらぽん』(はき師=医師+はり師+きゅう師)を名乗り、医師、鍼灸師を含む医療人が正しく活躍でき、お困りの方々がHappyになれるようなことをデザイン中✨
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※本記事の作成には生成AIを併用しています。内容については十分に確認しておりますが、誤りが含まれる可能性があります。掲載内容の正確性や最新性については、ご自身でもご確認ください。なお、本記事の内容を利用・転載・流用したことにより生じたいかなる損害や不利益についても、当方は責任を負いかねます。

著作物4要件・著作権侵害3要件&講演時やYouTube作成時に気を付けること

著作物の4つの要件と、ネット・医療現場で知っておくべき合法・違法の境界線

今回は、最近読んだ著作権法に関する書籍の内容について、自分自身の備忘録も兼ねて分かりやすくまとめてみたいと思います。書籍は最後にまとめています。2冊とも非常にわかりやすいので、ぜひ読んでみて下さい。

私たちが日常的に楽しんでいるエンタメコンテンツから、専門職としての情報発信に至るまで、法律上で何が保護され、どのような場合に侵害となるのか、基本となる重要なポイントを整理しました。

なお、著作権法は最近だと、平成30年改正、令和2年改正、令和3年改正、令和5年改正と重要な法律改正が行われているので、必ず最新の法律を参考にされて下さい。以下は生成AIと伴走して作成します。誤情報(ハルシネーション)の可能性もありますのでご留意下さい。

1. 著作権法の目的と「著作物」の4つの要件

著作“物”とは何かを確認する前に、まずは、著作“権”法という法律が何を目的としているのか。その基本となる第1条にまとまっているので確認してみましょう。

引用:著作権法第1条

この法律は、著作物並びに実演、レコード、放送及び有線放送に関し著作者の権利及びこれに隣接する権利を定め、これらの文化的所産の公正な利用に留意しつつ、著作者等の権利の保護を図り、もつて culture の発達に寄与することを目的とする。

このように、著作権法はクリエイターの権利を一方的に保護するだけでなく、「公正な利用」とのバランスを取りながら、私たちの社会の「文化の発達に寄与すること」を目指しています。

では、この著作“権”法によって保護される対象である著作“物”とは、具体的にどのようなものを指すのでしょうか。わかりますか。
あなたの歌った鼻歌は著作物ですか?
あなたが美術の時間に書いた自分の自画像は著作物ですか?
答えは後ほど、、。
まずは、著作“物”の定義を確認します。
定義は、著作権法第2条第1項第1号に次のように定められています。

引用:著作権法第2条第1項第1号

この法律において、著作物とは、思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものをいう。

この条文を細かく分解していくと、法律上で「著作物」として認められるために必要な4つの要件が見えてきます。それぞれの内容と具体例を整理してみましょう。

① 思想又は感情を

人間の心の中にあるアイデア、考え、気持ち、感動などがベースになっている必要があります。

具体例:旅行先で感じた美しい景色への感動、社会問題に対する個人の意見を綴った文章など。

著作物にならない例:単なる客観的なデータや事実そのもの(例:「昨日の東京の最高気温は30度だった」という事実)。

② 創作的に

他人の真似ではなく、作者独自の個性が何らかの形で表れている必要があります。高度な芸術性までは求められませんが、誰が作っても同じようになるものは除外されます。

具体例:独自の視点で書かれた小説の文章、オリジナルのメロディ。

著作物にならない例:短く平凡な挨拶文(例:「こんにちは、お元気ですか」)、単なる記号の羅列。

③ 表現したものであって

頭の中で考えているだけではなく、外部に向けて具体的に表現されている(形になっている)必要があります。

具体例:紙に書かれた文字、キャンバスに描かれた絵、録音された音声、デジタルデータ。

著作物にならない例:頭の中にある素晴らしいストーリーのアイデア(文字や形にする前の段階)。

④ 文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの

知的・文化的な創作活動の範囲に含まれるものである必要があります。

具体例:ビジネス書(学術・文芸)、ポップス曲(音楽)、イラスト(美術)。

著作物にならない例:自動車のエンジンやスマートフォンの内部基板など、実用品の機能そのもの(これらは特許法や意匠法などの別法律の対象となります)。

Q. あなたの歌った鼻歌は著作物ですか?

結論: 原則として、あなた自身が即興で生み出したオリジナルのメロディであれば著作物になります。

理由: 鼻歌であっても「思想や感情」を「創作的」に音として「表現」しているためです(録音されていなくても、声に出した時点で表現されたとみなされます)。ただし、既存の曲(例:好きなアーティストの曲)を単に口ずさんだだけの鼻歌は、あなた独自の創作ではないため、あなたの著作物にはなりません。

Q. あなたが美術の時間に書いた自分の自画像は著作物ですか?

結論: 著作物です。

理由: 上手・下手といった芸術性の高さに関係なく、あなたが自分の目で見た姿を、独自の視点やタッチでキャンバスに「創作的に表現したもの」だからです。「美術の範囲に属するもの」という要件も明確に満たしています。

2. 著作権侵害が成立するための3つの要件

他人の作品を無断で使用したからといって、すべてが法的な著作権侵害に該当するわけではありません。裁判などで侵害が認められるためには、以下の3つの要件がすべて揃う必要があります。

① 著作物性

侵害されたと主張する対象が、先ほど挙げた4つの要件を満たす「著作物」であるかどうかが大前提となります。

具体例:自分が書いたオリジナルの小説を真似された場合、その小説に著作物性があれば要件を満たします。もし真似されたのが「ありがとう」という一言だけであれば、独自の個性がない(著作物性がない)ため侵害は成立しません。

② 類似性

後から作られた作品が、元の作品の表現上の本質的な特徴を直接感じ取れるほど似ているかどうかという点です。

具体例:登場人物の名前やセリフ、ストーリー展開が酷似している漫画。

侵害にならない例:テーマ(例:「魔法学校での学園モノ」)が同じだけで、具体的なエピソードやキャラクターのデザインが全く異なる場合(アイデアが似ているだけでは類似性があるとは言えません)。

③ 依拠性

既存 of 作品を知った上で、それを元にして作られたか(真似をしたか)という点です。

具体例:他人のブログ記事をコピー&ペーストして少し語尾を変えただけの場合、元の記事を見て作っているため依拠性があります。

侵害にならない例:世の中に存在するある曲を全く聴いたことも知る機会もなかった人が、完全に自分の力だけで作曲した結果、偶然にもその曲とメロディがそっくりになってしまった場合。これは創作が独立して行われたため依拠性がなく、著作権侵害にはなりません。

3. インターネット上の定番コンテンツで考える境界線

この3要件を踏まえて、最近ネット上でよく見かける定番コンテンツの法的扱いについて考えてみましょう。

実は、法律の原則としては「アウト」であっても、プラットフォームの仕組みや公式のガイドラインによって「セーフ」として運用されているケースが多々あります。

◆ 歌ってみた・弾いてみた動画

他人が作った楽曲を自分で歌ったり演奏したりしてアップロードする行為です。

3要件の視点:メロディや歌詞には明確に著作物性があり、同じ曲を演奏するため類似性・依拠性も高く、原則は侵害に当たります。

なぜセーフなのか:YouTubeやTikTokなどの運営会社は、JASRACなどの音楽著作権管理団体と包括的なライセンス契約を結んでいます。そのため、ユーザーが「自分で演奏したり歌ったりした音源」であれば、個別に許可を取らなくても適法にアップロードできる仕組みになっています。逆に別の媒体で公開する際は、個別に許可を取る必要が出来くることもあるので注意です!

注意点:CDの音源やカラオケの伴奏をそのまま後ろで流す行為は、レコード会社などが持つ「原盤権」を侵害するため、包括契約の対象外(アウト)となります。

◆ ゲーム実況・配信動画

ゲーム画面を録画・配信しながら実況を入れるコンテンツです。

3要件の視点:ゲームは映像・音楽・シナリオなどが組み合わさった高度な著作物です。それをそのまま画面に映し出すため、3要件をすべて満たし、原則は著作権侵害となります。

なぜセーフなのか:多くのゲームメーカーが個人向けの「ゲーム実況ガイドライン」を公開しているからです。メーカー側が定めたルール(収益化の範囲やネタバレの禁止区域など)を遵守している限り、著作権侵害として訴えられない仕組みになっています。これも別の媒体で公開する際は、個別に許可を取る必要が出来くることもあるので注意です!

◆ 書籍の解説・要約動画

ビジネス書や小説などの内容を分かりやすく要約・解説する動画です。

3要件の視点:本の内容には著作物性があり、それを読んで動画を作っているため依拠性もあります。

境界線はどこか:本の内容を単に自分の言葉で言い換えただけであっても、核心部分やストーリー展開を丸ごとトレースして解説してしまうと、著作権法上の「翻案権(別の形に作り変える権利)」の侵害にあたる可能性が高くなります。著者の「本が売れる機会」を奪うような詳細な要約動画は非常にリスクが高いです。

セーフになるケース:「この本には〇〇という面白い視点があり、これについて私はこう思う」といったように、自分の意見や批評がメインであり、本の内容の一部を「引用」として紹介する程度に留めている場合は、著作権法上も認められやすくなります。

4. 【応用編】講演やYouTube動画で気をつけポイント

これまでは一般のエンタメコンテンツを例に挙げましたが、医療従事者(医師など)が一般の方に向けて健康講座の講演をしたり、YouTubeで医学情報を発信したりする場合にも、全く同じ著作権法のルールが適用されます。

医療情報というデリケートな内容を扱うからこそ、悪気なくやってしまいがちなNG例と、正しいOK例を整理しておきましょう。

例A:他人の論文の図表や、教科書のイラストをスライドに載せる場合

専門的な知識を分かりやすく説明するために、学術的な図やイラストを使いたくなる場面です。

✕ NGとなるケース:他人の教科書に載っている分かりやすい「胃の解剖図イラスト」を、スマホで撮影したりスキャンしたりして、そのままYouTubeの解説動画や市民講演のスライドに大きく貼り付ける行為。

理由:イラストには高い著作物性があり、そのまま使うと「類似性」「依拠性」が100%となって侵害が成立します。学術目的であっても、一般向けの動画や外部講演で他人のイラストを無断でそのまま使うことは原則できません。

◯ OKとなるケース:論文の「データ(数値)」だけを参考にし、グラフや表を自分自身の手で完全に新しく作り直して、出典(著者名、論文タイトル、発行年など)を明記する。

理由:実験結果の数値などの事実は「著作物」ではないため、それをベースに自分の個性でグラフを「創作」すれば侵害には当たりません。あるいは、著作権法上の「正当な引用」の要件(自分の解説がメインであり、図表はあくまで従たる関係であること、自分のパートと明確に区別すること等)を満たした上で、出典を記載して掲載します。

例B:製薬会社や医療機器メーカーのパンフレットの画像を使う場合

患者さんへの説明用パンフレットは非常によくできておリ、重宝します。

✕ NGとなるケース:製薬会社が作成したお薬の解説パンフレットのキャラクターや、病気のメカニズムの綺麗なイラストを、会社の許可なくYouTube動画のサムネイルや背景画像として大きく使用する行為。

理由:パンフレット内のイラストやデザインも企業の著作物です。院内で目の前の患者さんにパンフレットを見せながら説明するのは想定された用途ですが、不特定多数が見るインターネットや外部講演に無断で転載することは想定されておらず、著作権侵害に該当します。

◯ OKとなるケース:事前にその製薬会社やメーカーの担当者に「一般向けの講演(あるいはYouTube動画)で使用したい」と相談し、公式に利用許諾を得てから使用する。

理由:著作権者が事前に使用を許諾していれば、当然ながら侵害にはなりません。

例C:厚生労働省などの公的機関が出している資料の転載

国や自治体が発表しているガイドラインや統計データは、一般向けの発信でもよく引用されます。

◯ 原則OKとなるケース:厚生労働省が一般への周知目的で作成した「熱中症予防の啓発リーフレット」や「食事摂取基準のデータ表」を、そのままスライドの解説材料として使用し、出典を明記する。

理由:著作権法第32条第2項において、国や地方公共団体などが一般に周知させる目的で作成した広報資料や調査統計報告書などは、説明の材料として転載することが認められています(ただし、資料自体に「転載禁止」と書かれている場合は除きます)。公的な信頼性を担保する意味でも、非常に有効な活用法です。

まとめ

著作権法第1条が示すように、この法律は権利を厳しく縛るためだけのものではなく、文化が豊かに発展していくための利用のルールを定めたものです。

エンタメ動画のガイドラインも、医療発信におけるデータ引用のルールも、「元の権利者の利益や思いを尊重しながら、いかに公正に利用させてもらうか」という根底の思想はすべて共通しています。

情報を発信する側としては、公式のルールやガイドラインをしっかり確認し、元の権利者の利益を害していないかを常に意識しながら、安全に楽しく、そして信頼される発信を心がけていきたいですね。

 

 

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おまけ

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※本記事の作成には生成AIを併用しています。内容については十分に確認しておりますが、誤りが含まれる可能性があります。掲載内容の正確性や最新性については、ご自身でもご確認ください。なお、本記事の内容を利用・転載・流用したことにより生じたいかなる損害や不利益についても、当方は責任を負いかねます。

 

 

実践 行動変容のためのヘルスコミュニケーションー人を動かす10原則、奥原剛、大修館書店

個人的には、プレゼンは好きというか、興味があって、色んな書籍やセミナー参加など学習はしてきた。GLOBISでもビジネスプレゼンテーション?という科目もありましたが好成績でしたv。最近、連続してプレゼン指導を要望されて、思い出した書籍を引っ張り出したので、改めてまとめてみた。書籍の情報は最後にあります。

人を動かす原則

とかって考えたりすると烏滸(おこ)がましい感じもするけど、なんとなくそういう事をしてみたくなる日がくるし、そうなった時に力になると思います。

10原則の前に確認しておきたいこと

10原則に入る前に私は、プレゼンの目的・目標の一つは、聴衆の行動変容にあると思っている。この書籍は、リーフレットなどの作成時の原則ですが、パワポを使ったり、Web講演などでも原則一緒かなと思ってます。
ちなみに私のプレゼンの他の目標として、自分が気持ちよくなれるか、お友達が増えるか、などですw。ちなみに自分が気持ちよくなることに重きをおきすぎると、以下の原則10が欠けることになるw。
この前提が違ってる人であれば、この後は読まなくてOKです。

10原則:お薬しめじシチュウ

原則1:お:驚きを与える
原則2:く:クイズを使う
原則3:す:数字を使う
原則4:り:ストーリーを使う
原則5:し:視覚的・具体的に伝える
原則6:め:メリット・デメリットを感情に訴える
原則7:じ:情報量を絞る
原則8:し:シミュレーションしてもらう
原則9:ちゅ:中学生にもわかるように伝える
原則10:う:受けての視点で考える

何回はプレゼンやリーフレット作りをした人には、この10原則を読むだけでもフムフムってなる(なりますよね?)。書籍の紹介HPの目次を読むとさらに深まり、本書をビジュアル資料含めて、具体例も多く学びが深まります。
おそらく各個人のプレゼンにも型や癖があって、どれかがよく該当するけど、他のものは全く該当しなかったりしそう。
必ずしも全てを入れ込む必要はないけど、入るなら入れたほうがいいですよね。

裏9原則?!:やってはいけない9原則

実は、本書の142ページに<これをやるとわかり“にくく”なる>という9原則がある。
『やるべき原則は10個あるのに、なぜやっちゃいけないのは9個なんだ!』
『具体的に9原則はなんなんだ?』
と思った方は、ぜひ本書を読んでみて下さい。(販売促進w)おまけ:医はき師 てらぽんに関して

その他プレゼン関連や行動変容でまとめと書籍

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その他、ナッジという言葉で代表されますが、行動変容関連では、竹林正樹先生は個人的ファンです。

おまけ

わたくし、日常診療のかたわら、『医はき師 てらぽん』(はき師=医師+はり師+きゅう師)を名乗り、医師、鍼灸師を含む医療人が正しく活躍でき、お困りの方々がHappyになれるようなことをデザイン中✨
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てらぽん書籍関連『鍼灸まず読む本』など

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鍼灸素麺

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人生のアップデートのタイミングを教えてくれる15項目

YouTube見ててオモロイなぁ~と思ったチェックリストを備忘録的に。関連動画や関連書籍は、最後にあるので、ぜひご確認下さい。

人生のアップデートのタイミングはいつ?何をする?

思わず唸ったチェックリストがあった。

今回は、最近見て「なんだかしっくりきた」人生のアップデートのタイミングを教えてくれる15項目と、そこから深く考えさせられた「人生のアップデート」「本当にやりたいことの見つけ方」について書いてみようと思います。

このリストの項目に科学的根拠があるかはわかりません。でも、日々のモヤモヤの正体を見事にとらえているなと唸ったリストでした。

もし以下の項目に心当たりがあるなら、それはあなたの人生を次のステージへアップデートするタイミングかもしれません。その際に「本当にやりたいこと」を見つけられるとなおう良いかもしれません。

人生をアップデートするタイミングを評価するチェックリスト

□ 部屋が散らかったまま片付かない
□ 締め切りギリギリの仕事が多くなっている
□ 忘れていた予定がある □ 朝起きられない
□ 夕方になるともう何もする気力がない
□ 今とはまったくちがう人生を想像している
□ もう手遅れな気がする
□ 新しい人に会うのが面倒くさい
□ 新しいものを学ぶのが億劫
□ すぐスマホを触ってしまう
□ 30分集中して読書ができない
□ 目標がわからない
□ 計画を立てられない
□ なんのために生きているのかわからない
□ やりたいことがわからない

さて15項目中、いくつ当てはまりましたか?

これらの項目で興味深いのは、日常の中で簡単に起こりがちなことばかりだという点です。実はうっとうしいと思っていながらも、いつの間にかそれが生活に定着してしまいがちな項目が目立つ。

これらの項目に手間を惜しめなくなった、対処できなくなった時がまさに人生のアップデートを考えるタイミングなのかもしれない。

ただし注意が必要である。ある項目に該当した際、単に目の前の問題を「対処」することをアップデートするのではなく、「なぜこれが起きているのか?」という根本的な原因に目を向けて、人生をアップデートしていくことが大切となる

具体的に何をするかは下記の書籍を参考にされたい。
これからは、そのヒントを書いていく。

「散らかす」のは3才児でもできるが、「整える」には意志がいる

部屋を片付けるのには大きなエネルギーがいりますが、散らかすのは3才児でもできます。

これは部屋やデスクの上だけでなく、私たちの思考や頭の中でもまったく同じです。
思ったことを思ったようにやっていくと、頭の中は自然と散らかっていきます。

散らかすことには、自分の意志も努力も苦労もいりません。一方で、状態を整えておくためには、「自分がどうなっていたいか」という明確なゴールが必要となる。ゴールがなければ整えられない。

一方で、頭の中が散らかっていると、不安や退屈が襲ってきます。しかし、何かに没頭したり、いわゆるフロー状態に入ることができれば、そうした不安や退屈は自然と避けられるようになります。
そのために、よく言われるのが、「本当にやりたいこと」を探し、見つけること。

「本当にやりたいこと」と、終わったあとの「充実感」

では、没頭できるような「本当にやりたいこと」はどのような事なんでしょうか。

ポイントは、その最中ではなく、終わったあとに充実感があるか否かです。

例えば、雪登山家は過酷な道中の1歩1歩すべてに充実感を感じているわけではないと思います。ひとまずは生きて下山することが第一優先で、むしろ極寒の環境に辛さや苦しさの方が強いかもしれません。しかし、登頂して下山した後のふとした瞬間に、とてつもない充実感が込み上げてくるはずです。

発表スライドを作ったり、書籍などのアウトプット成果物を作成しているときが当たるかもしれません。

といっても私は少し特殊かもしれず、作り始める前までには苦悩は多めですが、作り始めたら結構充実感があります。でも作り終えた後や発表後の充実感はとてつもないです。このブログもその充実感のために書いてます(?)。

では本当にやりたいことを見つけるには、どうすればいいか?

他人の「うらやましいこと」をヒントにするのが近道かもしれません。ただし、自分は相手の何に対してうらやましいと感じているのかを一段解像度をあげるために、深掘りしてみるのです。そこに「本当にやりたいこと」の本質が見えてくるでしょう。

「うらやましい」から見つける「本当にやりたいこと」

たとえば、SNSで同世代の誰かが本を出版しているのを見て、「うらやましい」と感じたとします。

そのとき、単に「本を出したい」と考えるだけでは、少し解像度が粗いかもしれません。

深掘りしてみると、実はうらやましいのは「本を出したこと」そのものではなく、次のようなことかもしれません。

・自分の考えを一冊の形にまとめていること
・専門性が社会に認められていること
・誰かの学びに影響を与えていること
・長年の実践を言語化していること
・肩書きではなく、アウトプットで評価されていること

もし、自分が本当にうらやましいと感じているのが「自分の考えを形にして誰かに届けること」だとしたら、いきなり出版を目指さなくてもよいのです。

まずはブログを書く。
勉強会で話す。
SNSで短く発信する。
スライドにまとめる。
小さな原稿を書いてみる。

そうやって実際にやってみたあとに、疲れはするけれど充実感があるなら、そこに自分の「本当にやりたいこと」の種があるのかもしれません。

別の例で考えてみます。

知人が自由に働いている姿を見て、「うらやましい」と感じたとします。

この場合も、単に「自由に働きたい」と考えるだけでは不十分です。

本当にうらやましいのは、
・場所に縛られない働き方なのか
・時間を自分で決められることなのか
・組織に依存しない専門性なのか
・自分の名前で仕事をしていることなのか
・家族との時間を大切にできていることなのか

ここを分けて考える必要があります。

もし、うらやましさの正体が「時間の使い方を自分で決めたい」なのであれば、いきなり独立しなくても、まずは週に1時間でも自分の意思で使える時間を確保してみる。
もし、「自分の名前で仕事をしたい」のであれば、自分の専門性を発信したり、小さな依頼を受けたりするところから始めてみる。

つまり、「うらやましい」は、ただの嫉妬ではありません。

自分の中にある願望を教えてくれるセンサーです。

大切なのは、相手を見て落ち込むことではなく、
「自分はこの人の何に反応しているのか?」
と一段深く考えることです。

そして、その要素を小さく試してみる。

やってみて、終わったあとに充実感が残るか。
疲れても、またやりたいと思えるか。
自分のエネルギーを注いでも後悔しないか。

そこに、「本当にやりたいこと」の輪郭が少しずつ見えてくるのだと思います。

そして、それを実際にやってみて充実感があるかどうかが極めて大切になります。

「本当にやりたいことか?」の評価基準

自分のガソリンを空にできるほどのエネルギーを注げるか。ちょっとやってみて楽しい、くらいのことはよくあります。ビギナーズラックが伴えばなおさらです。しかし、自分のエネルギーをすべて使い果たせるほどの没頭やフロー状態になれる事象こそが、真の充実感をもたらし、「本当にやりたいこと」と言えます。

2つのウェルビーイング

こうした充実感や幸福感について考えるとき、2つの概念が参考になります。

・ヘドニック・ウェルビーイング(Hedonic Well-being:快楽的な幸福)
・ユーダイモニック・ウェルビーイング(Eudaimonic Well-being:生きがいや自己実現による幸福)

目先の楽しさ(ヘドニック)だけでなく、エネルギーを注ぎ込んで得られる充実感(ユーダイモニック)へと人生をシフトしていくこと。それこそが、今求められている人生のアップデートなのかもしれません。

以前のブログ記事でも、このウェルビーイングについて触れているので、よければあわせて読んでみてください。

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日常の些細なサインを見逃さず、簡潔に言えば、ユーダイモニック・ウェルビーイングを得られるような事象のなかにあり、自分がエネルギーを注ぎきれる「本当にやりたいこと」があり、ものを見つけていきたいですね。

参考情報

今回のブログは、以下のYouTubeや書籍をもとに書きました。
気になる方はぜひチェックしてみてください。

参考YouTube


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参考図書


おまけ:医はき師 てらぽんに関して

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鍼灸の有名論文の回想:慢性痛に鍼治療は効くのか?

今回は、鍼のエビデンスを語るうえでよく出てくる論文を取り上げた。偽鍼(シャム鍼・sham鍼)との比較の大切な考え方についてもまとめたよ。

鍼灸は慢性痛に効くのか?

17,922人分のデータで挑んだ“鍼灸界の超有名”メタ解析を読む

鍼灸について語るとき、よく出てくる疑問があります。

「鍼って、本当に効くの?」
「それってプラセボじゃないの?」
「ツボの場所って、そんなに大事なの?」

この問いにかなり正面から挑んだ、有名な論文があります。

Vickersらによる
“Acupuncture for chronic pain: individual patient data meta-analysis”
です。日本語にすると、
「慢性痛に対する鍼治療:個別患者データを用いたメタ解析」
という感じです。

論文は2012年に Archives of Internal Medicine に掲載されました。PMIDは 22965186 です。対象は、腰痛・頸部痛、変形性関節症、慢性頭痛、肩痛などの慢性痛です。

Acupuncture for chronic pain: update of an individual patient data meta-analysis - PMC


この論文のすごいところ

この研究の最大の特徴は、単なるメタ解析ではなく、個別患者データメタ解析である点です。

通常のメタ解析は、各論文に載っている平均値や効果量を集めて解析します。
一方、個別患者データメタ解析は、各研究の“患者さん一人ひとりのデータ”を集め直して解析します。

つまり、普通のメタ解析が「完成した料理の写真を見て味を推測する」ようなものだとすれば、個別患者データメタ解析は「レシピと材料を全部取り寄せて、もう一度きちんと調理する」ようなものです。

研究者からすると、これはかなり大変です。
データを持っている研究者に連絡し、提供してもらい、形式を整え、解析し直す。
いわば、エビデンス界の“年末大掃除+確定申告+引っ越し作業”です。

この論文では、適格とされた31試験のうち29試験からデータを入手し、合計 17,922人 の患者データを解析しています。対象となったのは、ランダム化比較試験のなかでも、割付の隠蔽が明確に適切と判断された質の高い研究です。


何を比べたのか?

この研究では、主に2つの比較が行われました。

1つ目は、
本物の鍼 vs 鍼をしない対照群

2つ目は、
本物の鍼 vs 偽鍼、つまりシャム鍼

です。

ここが重要です。

「鍼をした人」と「何もしなかった人」を比べれば、患者さんの期待、治療者との関わり、通院すること自体の安心感など、いろいろな要素が入り込みます。

一方で、シャム鍼と比べると、より“鍼そのものの特異的効果”に近いものを見ようとします。

ラーメンでたとえるなら、
「ラーメン屋に行くこと自体の満足感」と、
「スープ・麺・チャーシューそのものの実力」を、
できるだけ分けて考えようとしているわけです。違うかッ。

もちろん、鍼灸はラーメンではありません。
ただし、どちらも“体験全体”が大事という意味では、少し似ています。


結果:鍼は慢性痛に効いたのか?

結論から言うと、
鍼治療は、鍼をしない場合よりも痛みを改善していました。

さらに、
シャム鍼と比べても、本物の鍼の方が統計学的に有意に痛みを改善していました。

つまり、この論文のメッセージはかなり明確です。

鍼は慢性痛に対して有効であり、少なくとも“全部プラセボ”とは言い切れない。

ただし、ここで大事なのは“効き方の大きさ”です。

外れ値的に鍼に有利な研究を除いた解析では、本物の鍼とシャム鍼との差は、腰痛・頸部痛で標準化平均差0.23、変形性関節症で0.16、慢性頭痛で0.15でした。一方、鍼をしない対照群と比べると、腰痛・頸部痛で0.55、変形性関節症で0.57、慢性頭痛で0.42でした。

ざっくり言うと、

比較 効果の大きさ
鍼 vs 鍼なし 比較的大きい
本物の鍼 vs シャム鍼 小さいが有意な差あり

という結果です。

ここが、この論文の一番おもしろいところです。

「鍼は効かない」とは言えない。
でも、
「ツボの位置と刺入深度だけで全部説明できる」とも言いにくい。

鍼灸界にとっては、嬉しいような、耳が痛いような、でも非常に大事な結果です。


数字で見ると、どのくらい違うのか?

この論文では、効果量を実感しやすい例も示されています。

たとえば、痛みを0〜100点で評価し、治療前の痛みが60点だったとします。

その場合、治療後の痛みは、おおよそ次のようになるイメージです。

治療後の痛みの目安
鍼なし 43点
シャム鍼 35点
本物の鍼 30点

また、痛みが50%以上減った人を「反応あり」とすると、反応率は、鍼なしで約30%、シャム鍼で約42.5%、本物の鍼で約50%と説明されています。

これは、かなり臨床的にイメージしやすい数字です。

本物の鍼が“圧勝”というより、
鍼なしよりは明らかに良く、シャム鍼よりもさらに少し良い
という感じです。

野球で言えば、10対0の完封勝ちではなく、
4対2くらいで勝つ試合です。
地味ですが、勝ちは勝ちです。ここでは、野球にたとえてみた。

偽針との比較をどう考えるか?

本物の鍼が偽鍼との差がめちゃくちゃ大きく“無い”のは、鍼を刺す場所や深さが多少ズレていたとしても、皮膚や神経に刺激が入ること自体に一定の治療効果(非特異的な生理作用)があるからだと考えられています。決して鍼灸が無意味なのではなく、むしろ「体に触れて刺激を与えること」全体のポテンシャルの高さを示していると言えます。
その効果を示すとこんな感じ。

プラセボや対照群との比較に関して学びを深めたい人は、コチラの動画もオススメです。


www.youtube.com


この論文から読み取れる大切なこと

この論文の結論は、とてもバランスが取れています。

著者らは、鍼治療は慢性痛に対して有効であり、紹介先として合理的な選択肢になり得ると述べています。一方で、本物の鍼とシャム鍼との差は比較的小さいため、鍼の治療効果には、刺鍼そのものの特異的効果だけでなく、治療文脈、患者の期待、治療者との関係性なども重要に関わっていると解釈しています。

これは、鍼灸を考えるうえで非常に大事です。

つまり、

鍼は“ただのプラセボ”ではない。
しかし、
鍼は“ツボに刺せば自動的に効く魔法”でもない。

この中間に、臨床のリアルがあります。

鍼灸師の技術、ツボの選択、刺入の深さ、刺激量。
それに加えて、患者さんとの信頼関係、説明、安心感、通院のリズム、身体に向き合う時間。

これらが合わさって、治療効果が形になっている可能性があります。

つまり、鍼灸の効果は、
鍼先だけに宿るのではなく、治療の場全体に宿る
とも言えるかもしれません。(かっこいいw?)

でも、たぶん大きくは外していないと思います。


鍼灸師にとってのメッセージ

この論文は、鍼灸師にとって「鍼は効く!」と胸を張れる材料の一つです。

ただし同時に、
「だからツボの正確性だけがすべてだ」
という単純な話にはしていません。

むしろ、鍼灸師に求められるのは、技術と文脈の両方を大切にする姿勢だと思います。

刺鍼技術はもちろん大事です。
しかし、患者さんが安心して身体を預けられる説明、空間、関係性もまた、治療の一部です。

「経穴だけでなく、関係性にも取穴せよ」

……と言うと少し怪しい格言っぽくなりますが、臨床的には結構大事な視点です。


医師・医療者にとってのメッセージ

医師や医療者にとって、この論文は鍼灸を紹介する際の一つの根拠になります。

慢性疼痛の診療では、薬物療法だけで十分に改善しないことも少なくありません。
NSAIDs、アセトアミノフェン、神経障害性疼痛治療薬、運動療法、心理社会的アプローチなど、いろいろな選択肢があります。

その中で、鍼灸は万能ではありません。
しかし、慢性痛に対する一つの選択肢として、十分に検討する価値があります。

特にこの論文は、鍼灸を「信じるか信じないか」の話から、
どの程度の効果があり、どのような位置づけで使えるか
という話に進めてくれます。

鍼灸の議論は、しばしば宗教戦争のようになりがちです。

「鍼はすごい!」
「いや、全部プラセボでしょ!」
「いやいや、ツボは気の通り道にあり、人体は宇宙の一要素で……」

といった具合に、議論が宇宙空間まで飛んでいきそうになることがあります。

しかし、この論文はその空中戦を少し地上に戻してくれます。

鍼は慢性痛に有効。
ただし、効果の一部は特異的な刺鍼効果であり、一部は非特異的効果や文脈効果である。

このくらいの温度感が、医療者同士の対話にはちょうど良いのではないでしょうか。


注意点:この論文だけで言い切りすぎない

もちろん、この論文にも限界があります。

まず、鍼なし対照との比較では、患者さんも治療者も「鍼を受けているかどうか」が分かってしまいます。そのため、期待や満足感、報告バイアスの影響を完全には避けられません。

また、シャム鍼との比較でも、施術者は本物かシャムかを知っている場合が多く、完全な二重盲検は難しいです。これは鍼灸に限らず、運動療法、心理療法、手技療法など、多くの非薬物療法に共通する難しさです。

さらに、この研究は慢性痛を対象にしたものです。
したがって、急性痛、内科疾患、精神症状、不妊、耳鳴り、めまい、その他すべての症状にそのまま当てはめることはできません。

慢性痛に関する良質なエビデンスではある。
でも、鍼灸全体の万能証明書ではない。

ここは大事です。

「この論文があるから、鍼は何にでも効きます!」

と言ってしまうと、せっかくの良い論文が、急に通販番組みたいになってしまいます。


私、てらぽんのまとめ

この論文を一言でまとめるなら、こうです。

鍼灸は慢性痛に対して、鍼をしないより有効であり、シャム鍼よりも小さいながら有意に上乗せ効果がある。したがって“ただのプラセボ”ではないが、治療効果のかなりの部分には文脈効果や非特異的効果も関わっている。

これは、鍼灸にとって決して弱い結論ではありません。
むしろ、成熟した結論です。

鍼灸を過度に神秘化せず、かといって雑に否定もしない。
慢性痛に悩む患者さんに対して、現実的な選択肢として位置づける。

そのために、この論文は今でも読む価値があります。

鍼灸を語るときに必要なのは、
「効く・効かない」の二択ではなく、
「どの症状に、どの程度、どのような文脈で、どの患者さんに役立つのか」
を考えることだと思います。

そして、慢性痛に対する鍼灸は、その問いに対してかなり前向きな答えを持っている。

少なくともこの論文は、そう教えてくれます。

生成AIと相談して、以上のようなまとめになりましたが、皆さんのご意見をお待ちしています!!

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SWT理論:ゆるく繋がること大切

SWT理論って名前はあんまり広がって無い気もするが、『緩い人付き合いや、きつすぎない人間関係って大事だよね』って感じている人は多かろう。それがまさにSWT理論である。今回は、鍼灸を広めることにも重きをおきながらまとめた。

この記事のポイント

SWT理論とは、「弱いつながり」が新しい情報や機会を運びやすいという考え方である。
医療現場では、強いつながりは日々の安全を支え、弱いつながりは地域資源や新しい相談先を運んでくる。
医鍼連携では、医師と鍼灸師のあいだにある“弱いつながり”をどう育てるか“も”重要になる。
大切なのは、人脈を広げることではなく、患者さんの利益につながるネットワークを設計することである。

SWT理論とは何か

SWT理論とは、Strength of Weak Ties、つまり「弱いつながりの強さ」を意味する理論です。社会学者マーク・グラノヴェッターが1973年に提唱した考え方で、親しい友人や同僚のような強いつながりよりも、たまに会う知人や他部署・他施設の人のような弱いつながりの方が、新しい情報や機会を運びやすいとされます。
https://www.jstor.org/stable/2776392

強いつながりには、信頼、安心感、迅速な協力という大きな利点があります。一方で、同じ職場や同じ専門領域の中では、どうしても情報や視点が似通いやすくなります。

そこで役立つのが弱いつながりです。弱いつながりは、自分の普段の輪の外にある情報や人、資源へ橋をかけてくれます。

つながりを紐帯(ちゅうたい)と訳されることもあるが、個人的には紐帯って何?!ってレベルなので、“つながり”を採用する。

観点 強いつながり 弱いつながり
関係の特徴 接触頻度が高い、感情的に近い、信頼が厚い 接触頻度は低め、距離はあるが継続して認知されている
得意なこと 緊急対応、日常運用、暗黙知の共有、継続フォロー 新規情報、紹介先の発見、異分野知の導入、キャリア機会
情報の性質 既に共有済み・同質化しやすい 新規性が高い・異質な情報が入りやすい
ネットワーク上の役割 チームの安定化、信頼の維持 橋渡し、部門横断、地域連携、制度・資源への接続
医療での典型例 同病棟の看護師、主治医チーム、固定の多職種カンファ 他院総合診療医、地域の鍼灸師、訪問看護、薬局、ケアマネ、学会で知り合った同世代
鍼灸での役割 長期通院患者との継続関係、院内スタッフ連携 医師からの紹介、地域包括支援センターとの接点、逆紹介、合同勉強会
主なリスク 閉鎖性、視点の固定化、同質的情報に偏る 連絡が切れやすい、質の見極めが必要、責任分担が曖昧になりやすい
実践ポイント 信頼を維持し、役割と目的を明確化する

専門性・紹介基準・連絡方法を可視化し、時々更新する

この表の要点は、「どちらが上か」ではなく、役割が違うということです。医療現場では、強いつながりだけでは閉じ、弱いつながりだけでは支えきれません。安全は強いつながりで、変化は弱いつながりで生まれます。

医療現場で考えるSWT理論

医療現場では、まず強いつながりが不可欠です。弱いじゃなくて、強いネ。

復習ですが、安全は強いつながりで生まれます。だから医療現場では、まず強いつながり(安全)が大切になる。
病棟、外来、診療科、訪問診療チームなど、日々顔を合わせるメンバーとの信頼関係は、患者安全そのものを支えています。急変対応、情報共有、退院支援、処方調整などは、強いつながりがあるからこそ円滑に進みます。
一方で、強いつながりだけでは限界もあります。
たとえば、退院後の生活支援、介護保険の活用、在宅での観察、地域の通いの場、就労支援、緩和ケア、鍼灸や漢方などの補助的選択肢は、病院内だけでは見えにくいことがあります。
ここで、他院、訪問看護師、薬剤師、ケアマネジャー、地域包括支援センター、行政、患者会、鍼灸師などとの弱いつながりが力を発揮します。
強いつながりは「今ここ」の安全を支え、弱いつながりは「次の一手」を連れてくる。
これが、医療におけるSWT理論の実感しやすい理解だと思います。

鍼灸と医療連携における意味

鍼灸の領域では、医師と鍼灸師が日常的に強くつながっているケースは、まだ多くありません。病院の中で鍼灸が実践されている場面も一部に限られます。
だからこそ、弱いつながりを意図的に作ることが重要になります。
医師にとって鍼灸師とのつながりは、慢性疼痛、不眠、食欲低下、がん治療に伴う症状、薬剤だけでは対応しにくい訴えに対する新しい選択肢を知るきっかけになります。
鍼灸師にとって医師とのつながりは、レッドフラッグの相談、精査依頼、持病や薬剤情報の確認、医療との安全な接続につながります。
ここで大切なのは、単に「知り合いになる」ことではありません。
どのような症状を相談できるのか。
どのような場合に医療機関へつなぐのか。
料金や予約方法はどうなっているのか。
紹介後の報告はどう返すのか。
こうした情報が見えることで、弱いつながりは実際に機能する“橋”になります。

てらぽんとの弱いつながりでの好転例

鍼灸医療連携において、医師の方から「私の父が鍼灸をうけたがっているんだけど、てらぽん先生、◯◯地域でいい鍼灸院を知らいないですか?」
って相談をふいに受ける。本当、不意にである。それも何年ぶりの連絡だよ?!ってな感じで。
その後、いくつかの情報提供をして、結果的に鍼灸を通じて、患者の状態改善につながる、、。
これが、まさにStrength of Weak Tiesだと感じている。違うか?!自己満か?!

ここで、
てらぽん「じゃ、私が鍼灸しに行きますよ(片道4時間かかりますが)」ってのが、強いつながりになるのかな。ただのおせっかいか。w

若手医師と鍼灸師ができること

若手医師にとっては、自分のテリトリー外の人と出会う場に定期的に参加することが第一歩です。テリトリーは、専門医の種類でもいいし、地域でもいいし、年齢でもいいし、、。なんか自分とちがうところに飛び込むことですね。最初はめちゃ緊張したり、ストレスかかるかもしれんけど、、😅
地域ケア会議、退院支援カンファレンス、緩和ケアの勉強会、疼痛や漢方・東洋医学の研究会、院外の症例検討会などに参加すると、普段の職場では出会わない人の視点を知ることができます。
鍼灸師にとっては、まず「紹介しやすい情報」を整えることが大切です。
得意領域、対応できる症状、対応が難しい症状、医療機関へ紹介すべきサイン、料金、予約方法、報告書の形式、連絡先などを1枚のシートやホームページやブログにまとめておくこと。もしくは、私が何者か?どんな鍼灸師かを、プレゼンできるようにしておく。できれば、10秒、30秒、1分、3分、5分くらいで時間別に用意しておけばバッチシですね。
私は、立場上、鍼灸に関する質問をたくさん受けるので、皆さんの力を借りて幸運にも1冊の本にまとめることができたので。簡単に回答したあと、『詳しくはこの書籍とか使ってみて下さい』などと回答している。
そうすると『あの本、読んで聞きたいことがあるんですけど』って質問が数か月ぶりの連絡としてきたりする。これも、Strength of Weak Tiesだと感じている。

ちなみに、紹介と逆紹介の小さな往復も、Strength of Weak Tiesには重要です。
医師が「慢性腰痛で画像上の緊急性は低いが、不眠と不安も強い」と共有する。
鍼灸師が「疼痛は軽減しているが、夜間痛が残る」「しびれが増悪しているため再評価が必要」と返す。
このようなやり取りが積み重なると、弱いつながりは信頼できる連携に変わっていきます。

注意すべきこと

弱いつながりを広げるうえで、注意すべき点もあります。
まず、患者情報を関係づくりの材料にしてはいけません。SNSや勉強会での発信でも、個人が特定される情報の扱いには十分な配慮が必要です。
また、鍼灸を医療連携の中で活用するには、安全管理、感染対策、適応と限界の理解が欠かせません。医師も鍼灸師も、それぞれの専門性と責任の範囲を明確にしておく必要があります。

まとめ

SWT理論は、単なる人脈づくりの話ではありません。
医療現場に置き換えると、強いつながりは患者さんの日々の安全を支え、弱いつながりは新しい選択肢や地域資源を運んでくれます。
鍼灸と医療の連携においても、いきなり強固な関係を作る必要はありません。まずは、顔が見える、相談できる、報告が返ってくるという小さな関係から始めればよいのです。
強いつながりは日々の安全を支え、弱いつながりは地域資源と新しい選択肢を運んでくる。
医療者にとってSWT理論は、人脈論ではなく、患者利益のためのネットワーク設計論です。

参考文献

以下は、本稿の理解に特に重要だった原典・主要論文・公的資料です。

  • Granovetter MS. The Strength of Weak TiesAmerican Journal of Sociology. 1973;78(6):1360-1380. 
  • Granovetter M. The Strength of Weak Ties: A Network Theory RevisitedSociological Theory. 1983;1:201-233. 
  • Rajkumar K, Saint-Jacques G, Bojinov I, Brynjolfsson E, Aral S. A Causal Test of the Strength of Weak TiesScience. 2022. 関連解説:MIT News. 
  • 厚生労働省. 「チーム医療の推進について」および地域包括ケア・在宅医療介護連携関連資料. 
  • Haruta JH, Tsugawa S, et al. What Types of Networks Do Professionals Build, and How Are They Affected by the Results of Network Evaluation? Frontiers in Public Health. 2021. 
  • O’Daniel M, Rosenstein AH. Professional Communication and Team Collaboration. AHRQ, 2008. 
  • Rawlinson C, et al. An Overview of Reviews on Interprofessional Collaboration in Primary Care. 2021. 
  • Wu J, et al. Integration of Acupuncture Into Family Medicine Teaching ClinicsJ Altern Complement Med. 2009;15(9):1015-1019. 
  • Griffin KH, et al. Referrals to Integrative Medicine in a Tertiary HospitalBMJ Open. 2016;6:e012006. 
  • Chen L, et al. A Survey of Selected Physician Views on Acupuncture in Pain ManagementPain Medicine. 2010;11(4):530-534. 
  • Li H, et al. Barriers and Facilitators to Integrating Acupuncture into the U.S. Health Care System: A Scoping Review. 2024. 
  • 増田卓也 ほか. 「医師と鍼灸師が連携する新たな総合診療の形を目指して:その有用性と課題」日本病院総合診療医学会雑誌. 2023. 
  • 「当研究所における多職種連携強化に向けた鍼灸師の取り組み」日本東洋医学雑誌. 2016. 
  • 「地域包括ケアシステムにおける鍼灸と多職種連携に関する調査」伝統医療看護連携研究. 2021公開. 
  • 冨田健一. 「理学療法士から見た鍼灸の役割」全日本鍼灸学会雑誌. 2025. 
  • NICE. Chronic pain in over 16s: assessment and management (NG193). 2021. 
  • American College of Physicians. Low back pain guideline and official statement, 2017. 
  • WHO. WHO Benchmarks for the Practice of Acupuncture. 2021. 
  • 公益社団法人 全日本鍼灸学会. 鍼灸安全対策ガイドライン 2025年版
  • AMA Code of Medical Ethics. Professionalism in the Use of Social Media
  • Gilmour J, et al. Referrals and Shared or Collaborative Care: Managing Relationships with Complementary and Alternative Medicine PractitionersPediatrics. 2011. 


おまけ:医はき師 てらぽんに関して

わたくし、日常診療のかたわら、『医はき師 てらぽん』(はき師=医師+はり師+きゅう師)を名乗り、医師、鍼灸師を含む医療人が正しく活躍でき、お困りの方々がHappyになれるようなことをデザイン中✨
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※本記事の作成には生成AIを併用しています。内容については十分に確認しておりますが、誤りが含まれる可能性があります。掲載内容の正確性や最新性については、ご自身でもご確認ください。なお、本記事の内容を利用・転載・流用したことにより生じたいかなる損害や不利益についても、当方は責任を負いかねます。

生成AIが無い時代に研修できて良かった?!NEJMが警告する3つの学習リスク

最近、当たり前に学習や教育に生成AIが入ってきている。
医療の分野では、OpenEvidenceが有名であろうか

https://www.openevidence.com/

しかし、生成AI活用した学びの落とし穴もある。そんな話題を扱った論文をまとめてみた。鍼灸師としての学びの例も挙げてます。
ぜひ、自身の学びや後輩指導の時にご活用下さい。

論文タイトル

Educational Strategies for Clinical Supervision of Artificial Intelligence Use
Authors: Raja-Elie E. Abdulnour, M.D. 
Published August 20, 2025

Educational Strategies for Clinical Supervision of Artificial Intelligence Use | New England Journal of Medicine

生成AIが無い時代に研修できて良かった?!生成AI学習の落とし穴

先日、NEJM(New England Journal of Medicine)に掲載されたAIと医学教育に関する論文を読みました。

AIに関する論文は数多くありますが、この論文は単なる「AIは便利です」「AIを活用しましょう」という内容ではありません。

むしろ、
「AIは便利だが、使い方を間違えると学習そのものを損なう可能性がある」
という警鐘を鳴らしています。
論文を読みながら、ふとこんなことを思いました。
「生成AIが無い時代に研修できて良かったのかもしれない」
もちろん私はAI推進派です。実際に日常診療、執筆、講演準備、情報収集などで生成AIを活用しています。
しかし同時に、この論文が指摘するリスクにも強く共感しました。

AIがもたらす3つの学習リスク

論文では、生成AIの過度な利用によって生じるリスクとして次の3つを挙げています。
まずざっと、その後に詳細に研修医・鍼灸師の実例を挙げてます。

用語 一言でいうと
Deskilling 「できていたことが、できなくなる」
Never-skilling 「できるようにならない」
Mis-skilling 「間違ったまま、できるようになる」

① Deskilling(デスキリング)

これは、
「身につけた能力が衰えること」
です。

例えば研修医が患者さんを診るたびに、
「胸痛の鑑別診断を教えて」
とAIに聞くようになったとします。

最初は便利です。
しかし、毎回AIに頼っていると、自分で鑑別を考える機会が減ります。
すると、

・急性冠症候群
・大動脈解離
・肺塞栓症

といった危険な疾患を瞬時に思い浮かべる力が徐々に弱くなります。

鍼灸師であれば、
「この腰痛にはどの経穴が良いですか?」
を毎回AIに聞くようになれば、
病態把握や取穴の思考プロセスそのものが衰えていくかもしれません。

② Never-skilling(ネバースキリング)

これは、
「本来身につくべき能力が育たないこと」
です。

デスキリングとの違いは、
「失う」のではなく「最初から育たない」
という点です。

例えば学生や若手鍼灸師が、
問診をする前からAIに相談し、
診察する前からAIに答えを聞き、
評価する前からAIに方針を決めてもらう。

そうすると、
・仮説を立てる力
・観察する力
・問診する力
・判断する力
が育ちません。

これは、九九を覚える前から常に電卓を使うようなものです。
答えは出せても、計算能力は育ちません。

③ Mis-skilling(ミススキリング)

そして最も怖いのがこれです。
「間違ったことを学習してしまうこと」
です。
生成AIは非常に賢く見えます。
しかし、時々もっともらしい間違いを堂々と話します。
いわゆるハルシネーション(誤情報)です。

もしAIの誤った判断を鵜呑みにしてしまえば、
その誤りそのものが学習されてしまいます。
例えば、
「この症状は問題ありません」
という誤った回答を繰り返し信じれば、
本来気づくべきレッドフラッグを見逃すようになるかもしれません。
これは医師にも鍼灸師にも共通する問題です。

用語 意味 起こること 医師の例 鍼灸師の例
Deskilling(デスキリング) 身につけた能力が衰える AIへの依存によって、自分で考える機会が減る 毎回AIに鑑別診断を聞くうちに、自力で鑑別を挙げる力が低下する 毎回AIに治療方針や経穴を聞くうちに、病態把握や取穴能力が低下する
Never-skilling(ネバースキリング) 本来身につくべき能力が育たない 学習の初期段階からAIに頼り、基礎能力が形成されない 問診や診察より先にAIへ相談するため、臨床推論が育たない 問診・切診・弁証より先にAIへ相談するため、東洋医学的思考が育たない
Mis-skilling(ミススキリング) 誤った能力や知識が身につく AIの誤りやバイアスを学習してしまう AIの誤診を信じ続け、間違った診断パターンが定着する AIの不正確な経穴選択や治療方針を信じ、誤った臨床判断が定着する

それでもAIは使うべきだと思う

ここまで読むと、
「じゃあAIなんて使わない方がいいのでは?」
と思われるかもしれません。
しかし論文の主張はそうではありません。
むしろ逆です。
AIは積極的に使うべきだと述べています。
ただし、
AIに考えてもらうのではなく、AIと一緒に考える
ことが重要だとしています。

論文では、

Verify and Trust

という言葉が繰り返し出てきます。
日本語にすると、
「まず検証し、その後に信頼する」
≒鵜呑みにすなぁ~、少しは自分の頭で考え~
です。

AIの回答をそのまま受け入れるのではなく、
・本当にそうなのか?
・他の可能性はないのか?
・根拠は何か?
を考える。
その過程こそが学習になります。

鍼灸教育にも当てはまる

私は鍼灸師向けに「レッドフラッグ教育」を行っています。
AIが発達した時代だからこそ、
・突然発症
・冷汗
・神経脱落症状
・バイタル異常
といった危険サインを自分で見抜く力が重要になると思っています。
AIは鑑別診断を出してくれるかもしれません。
しかし患者さんを直接診て、
違和感を感じ取り、
危険性を察知するのは人間です。
東洋医学的な診察や取穴も同じです。
AIは参考意見を出せます。
しかし患者さんの表情や声色、脈や腹の情報を総合して判断するのは私たち自身です。

生成AI時代に必要なのは

AIは優秀です。
おそらく今後さらに優秀になります。
しかし、
AIが優秀になるほど、
人間の「考える力」の価値は高くなるのではないでしょうか。
AIは優秀な相談相手です。
ですが主治医ではありません。
AIは優秀な参考書です。
ですが学習そのものではありません。
生成AI時代だからこそ、
自分の頭で考え、
判断し、
患者さんを守る力を育て続けたいと思います。
そしてその意味では、
生成AIが存在しない時代に、
必死に鑑別診断を考え、
先輩医師や鍼灸師に怒られながら学べた経験は、
今振り返ると貴重な財産だったのかもしれません。

おまけ:医はき師 てらぽんに関して

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※本記事の作成には生成AIを併用しています。内容については十分に確認しておりますが、誤りが含まれる可能性があります。掲載内容の正確性や最新性については、ご自身でもご確認ください。なお、本記事の内容を利用・転載・流用したことにより生じたいかなる損害や不利益についても、当方は責任を負いかねます。

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